SEIJI FUJIWARAのブログ

30代、貿易課で働く双子の父です。

山崎豊子「大地の子」

2週間ほど山崎豊子大地の子」をむさぼり読んだ。

 

大地の子(一)

大地の子(一)

 

 このテーマで中国を書き切った事がすごい。

 「大地の子」は毛沢東周恩来華国鋒、鄧小平まで続く激動の政情下にある中国で生きる残留孤児の日本人青年を描いている。


 すでに戦争作品の「不毛地帯」「二つの祖国」を書き国際的に名が通る彼女に中国政府は作品を書くことを依頼した。その後取材を進めるも中国での取材の難しさから一時断念。そこで当時の総書記胡耀邦に訴え1984年に以下の確約をもらう。

それがわが国の官僚主義の欠点だ、必ず改めさせるから十年がかりででも書くべきだ、中国を美しくかかなくても結構、中国の欠点も暗い影も書いてよろしい、それが真実であるならば、真実の中日友好になる 

山崎豊子大地の子」(文春文庫 あとがき)

 政府トップから確約のおかげで外国人未開放地区の農村、労働改造所の取材、戦争孤児と養父母の家へのホームステイをしながら残留孤児の生活や文化大革命時代の強制労働の実態を目の当たりにする。

 その後、胡耀邦天安門事件の後で失脚。1990年代に入ってからでは中国での外国人の取材が厳しくこの作品は世に出なかったと思われる。数少ない民主が進んだ時代だから世に出ることができた。


中国という国。そこに生きる人たちを描くためには、机の上で資料を読むだけでは描けない。彼女の取材力に傾いて色々考えてしまった。

https://www.youtube.com/watch?v=A9-py8HYPYc