SEIJI FUJIWARAのブログ

30代、貿易課で働く双子の父です。

勝海舟の「どうして武士道が廃れるのか」の理由に納得。

 友人の家の本棚にあった「勝海舟全集」を借りて読みました。

勝海舟全集〈14〉 (1970年)

勝海舟全集〈14〉 (1970年)

 勝海舟が晩年に後述した話が口語で書かれていて読みやすいです。
今まで幕末小説はいろいろ読んだけど、歴史資料としての原文を読んだのは初めてだったので新鮮。数あまたある歴史漫画の勝海舟はここから描かれていることがよくわかります。


・子どもの頃、日本橋でお使いをたのまれたお餅を地面に全部落としてしまった話
・子どもの頃、野犬に股間を噛まれ、金玉が一つない話
・どん底に貧乏だったときに、人の紹介で書物の費用として大金を援助された話
・人切り以蔵に命を守ってもらった話
西郷隆盛との品川での江戸城開城の話


 いろんな人物の批評がちゃきちゃき江戸っ子言葉で書かれていて、面白いというか痛快。
何十人も人物批評(西郷隆盛とか、井上馨とか、伊藤博文とか)がされているのに、坂本竜馬について記載がなかったことに驚き。その中でも、西郷どんへの評価がダントツで高いです。やっぱり、人望という点では幕末時代の中でも飛びぬけていたんでしょうね。


ちなみに坂本竜馬勝海舟の死後、大正時代以降にスポットを浴び、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」で脚光を浴びて、一躍幕末界のトップスターとされ現在に至っています。「竜馬がゆく」の中でも、明治時代に坂本竜馬を知る人は皆無だったと記述があります。

竜馬がゆく (新装版) 文庫 全8巻 完結セット (文春文庫)

竜馬がゆく (新装版) 文庫 全8巻 完結セット (文春文庫)

歴史って本当に芸術作品と同じで、良き擁護者に出会うなんでしょうね。勝海舟坂本竜馬への記述がどこかにないか・・・日本に帰ったら読みたいです。


この本の中で一番気になったのが勝海舟が考える「どうして武士道が廃れるのか」という問いへの答えについてでした。下記、引用。


 武士気的気風は、日をおうてくずれてくる。これはもとより困ったことに相違ないが、しかしおれはいまさらのようには驚かない。それは封建制度が破れれば、こうなるということは、ちゃんと前からわかっていたのだ。
 
 今でも俺が非常な大金持ちであったら、四、五年のうちにはきっとこの風をばん回してみせる。それはほかでもない。全体、封建時代の武士というものは、田を耕すこともいらねば、物を売買することもいらず、そんなことは百姓や町人にさせておいて、自分らはお上から禄を貰って、朝から晩まで遊んでいても決して食うことに困るなどという心配はないのだ。それゆえにいやでもおうでもぜひに書物でも読んで、忠義とか廉恥とか騒がなければしかたがなかったのだ。
それだから封建制度が破れて、武士の常禄というものがなくなれば、従って武士気質もだんだん衰えるのは当たり前ということさ。その証拠には、今もし彼らに金をくれてやって、昔のごとく気楽なことばかり言われるようにしてやりさえすれば、きっと武士道もばん回することができるに相異ない。
勝海舟全集14 氷川清話P192−193」


勝海舟的の言葉をもっと砕くと「武士道ができたのは、田畑を耕す必要もないし、時間が有り余ってるから」だそうです。実質的な理由で妙に納得というか、これが本質なんだろうなと感じました。

幕末小説はわりと読むタイプですが、凝り固まった空想の「武士道」を振り回す人に、違和感を感じることがあるので納得。
 
 幕末の歴史人物の中では個人的には、勝海舟が一番好きです。坂本竜馬よりも、勝海舟
上記の長いメモをとっていても、ざっくばらんな話言葉でタイプがし易かった
(150年前に生きた人の言葉とは思えない)

 本質を見抜き、自分の言葉で語れる人。
しかも江戸幕府の体制の人間でありながら、倒幕の流れを読みつつ、終着地点「江戸城無血開城」を導いたところが本当にすごい。坂本竜馬を引っ張りあげたのも、勝海舟
維新後、平民に下がった旧武士をどうやって食べさせるかに奔走し、旧武士からは悪口をたたかれ、明治新政府にも登場しようとしなかった人。


武士道ができた理由について書きたかったのに、勝海舟ファンである説明のほうが長くなってしまいました。