SEIJI FUJIWARAのブログ

30代、貿易課で働く双子の父です。

「天璋院 篤姫」(宮尾登美子)

 昨年末、女流作家の宮尾登美子、一昨年は社会派作家の山崎豊子も亡くなりました。熱中して読んだ作家たちの訃報に、生前にもっと読んでおけばと思うものがあります。講演会に足を運ぶほどでもなく文章を読むだけなのに、著者がまだ執筆活動を続けているうちの読む作品と、死後に読む作品とで違いがあるような気がします。

 自宅の父親の本棚で発見した「天璋院 篤姫」(講談社文庫・宮尾登美子)を読みました。2008年NHK大河ドラマの原作で、篤姫役を宮崎あおいが演じました。大河の中でも人気作品だったので、覚えている方も多いと思います。

新装版 天璋院篤姫(上) (講談社文庫)

新装版 天璋院篤姫(上) (講談社文庫)

 

 篤姫は徳川13代将軍、徳川家定の正室として大奥3000名の女中の頂点に立った女性。幕末から江戸城開城まで裏方の徳川ファミリーを守り抜こうと支えました。幕末小説は自然と「新撰組」「坂本竜馬」「吉田松陰」等の新しい日本を作る現場で奔走した男が大半。その中で姫は徳川幕府を何とか守ろうと動いた人。江戸の無血開城が実現したのは、西郷隆盛勝海舟のやり取りだけでなく、13代正室の篤姫、14代の皇女和宮天皇家への勅願も影響しているというのが宮尾登美子の見方。

 

何かを作ろうとするもの。

何かを守ろうとするもの。

 

 明治政権にとって、討幕派は正義でり、幕府側は賊軍。高校、大学時分は「討幕派」の開明的な歴史人物に偏って読み漁りましたが、最近は賊軍とされ歴史の中で埋もれた人たちの生きざまの方が興味があります。

 本作品は宮尾登美子作品の最有力の一つ。「大物作家の定番どころは読んでおいて損はないな・・・」と思わされる典型でした。