見えていないものが、一気に正体を現した時の感覚は小さい頃からある。
小学校4年生の時だった。
実家の近くの「トーホー」というスーパーの前を通る時だった。
トーホーは神戸市内で展開している生鮮食料品店だ。
やれ牛乳、卵と母親から頼まれると毎回トーホーに行っていた。
何百回も利用していた。
そんなあるときふと、トーホーの反対車線からトーホーを見上げた。
おばさんが、トーホーの建物上のベランダ越しに布団を叩いていた。
「ト、トーホーって1階建てじゃないんだ・・・」
トーホーは1階に店舗がある。
生まれて初めてトーホーの建物の2階以上があることに気づいた。
トーホーの1階の入り口を見てしか生きていなかった。
僕はトーホーのある建物の階以上のマンション部分を5分くらい見続けていた。
トーホーの建物は、7階建位のマンションだったのだ。
2階から上に広がるベランダの生活空間。
蒲団を干していたり、花を育てていたり、洗濯物を取り込んでいたり。
そこには明らかに、人間の集まる空間があった。
僕は、何もしらなかったことに愕然とした。
そして次の瞬間、あることに驚愕する。
「ここの4階って、通っている塾があるところやん」
なんと当時通っていた、小さな個人塾がトーホーの上のテナント部分だったのだ。
汗をだらだら流しながら、おしっこがちびりそうになった。
確かにその時に見上げた正面部分といつも入る入口は違っていた。
勝手にトーホーの隣に隣接する細長いマンションと思いこんでいた。
でも普通の人間なら気づくはずだ。
小学校4年生なら気づいてほいい。。
小学校のころから僕は、何かに集中すると完全に他を見失う性格だった。
中学の頃からだろうか、自分に「バランス力」が足りないのだと考えるようになる。
高校、大学とバランス力が自分のテーマだった。
自分の意見が客観的に通用できるか、などと本気でそのための方法を考えたりしていた。
そういう部分が、「ジャーナリズム」とつながっていたんだろう。
話をこれ以上広げてもしかたがない。
トーホーを知らない人。
神戸市の人じゃない人。
垂水区星陵台サンライズ通りを知らない人。
戯言です。