平和構築

平和構築―アフガン、東ティモールの現場から (岩波新書)

「平和構築」（東大作　岩波新書）を読んだ。
元NHKディレクターの著者が昨年アフガニスタン・東ティモールでの調査を元に書かれた、平和構築に「何が基礎として必要で」「外部からの支援にどのような注意が必要か」が明確にわかる1冊だ。

特に強調しているのが、Legitimacy（レジティマシー）という概念。
レジティマシーとは人びとが社会のルールを強制ではなく、自主的に受け入れ、従うように誘因する心理的な力とされる。
信頼関係の構築に必要な要素をしっかり意識して実践する。
約束は守ることから、相手の集団を尊敬するまでありとあらゆることに及ぶ。
平和構築はまさに戦略。
しかしそれを作り出すのは生身の人間による信頼関係の積み重ね。

テロ活動が続く、地域での取材も含まれており相当の取材ネットワークが伺える。JICAや国連からの多くを推薦状や許可書を得たうえでの取材だったことが記されている。あらゆる人脈を駆使して、万全の体制で臨むフィールド調査には、精度の高さの証明にもなる。

東さんはNHKをやめてから「平和構築に貢献できるような専門家になりたい」と現在、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学大学院博士課程で研究をされているそうだ。ジャーナリストとしての才能が惜しいくらいだ。